2026年8月6日(木)
コラム
東京都港区の大型納骨堂が資金繰りの悪化により差し押さえられ、強制競売の手続きが始まったという報道がありました。
永代供養のはずが…都心のビル型納骨堂、資金繰り悪化で差し押さえ 強制競売なら遺骨の行方はどうなる?:東京新聞デジタル
この出来事は、一つの寺院の経営問題にとどまらず、「寺院とは何を守る場所なのか」を私たちに問いかけているように思います。
”坊主丸儲け”という言葉が独り歩きし、「お寺は宗教法人だから、お金の心配はしなくてもよい」と考える方もいるかもしれません。
しかし現実には、本堂や境内の維持管理、建物の修繕や保険、光熱費など、お寺を守り、ご供養を続けていくためには多くの費用が必要です。
寺院も社会の中で歩む一つの組織です。健全な運営がなければ、祈りの場を未来へ受け継いでいくことはできません。
だからといって、お金を目的にしてしまえば、本来の寺院の姿は失われます。
ご供養が商品となり、お参りする人が「顧客」となってしまえば、寺院の使命は大きく揺らいでしまうでしょう。
今回の納骨堂の問題も、機械式納骨堂という仕組みそのものが悪いわけではありません。
ビル型機械式納骨堂のメリットは多々あります。
1. 天候に左右されずお参りできる
屋内施設のため、雨や猛暑、寒さを気にすることなく、年間を通して快適にお参りできます。高齢者や小さなお子様連れにも優しい環境です。
2. 都市部でも利用しやすい
駅から近い立地が多く、仕事帰りや買い物の途中でも立ち寄りやすいことが大きな魅力です。車がなくてもお参りしやすくなります。
3. お墓の清掃や草取りが不要
屋外墓地のように雑草が生えたり墓石が汚れたりすることが少なく、管理の負担が軽減されます。
4. バリアフリーに配慮されている
エレベーターや空調設備が整っている施設が多く、車椅子の方や高齢の方でも安心して参拝できます。
5. 限られた土地を有効活用できる
都市部では墓地用地の確保が難しいため、立体的に納骨できる機械式納骨堂は、多くの方に供養の場を提供できるという社会的な役割があります。
6. セキュリティが高い
ICカードや顔認証などを採用している施設も多く、ご遺骨の管理や防犯面で安心感があります。



しかし、大規模な設備には多額の建設費や維持管理費が伴います。
経営が揺らげば、その影響は建物だけでなく、大切なご遺骨を預けた方々の安心にまで及びます。
「永代供養」とは、建物を永く維持することではありません。
故人を敬い、ご遺族が安心して手を合わせられる環境を、世代を超えて守り続けることです。
その「永代」を支えるのは、豪華な設備ではなく、寺院が健全に歩み続けるための責任なのではないでしょうか。
仏教には「中道」という教えがあります。
何事にも偏らず、調和を大切にする生き方です。
寺院経営もまた、この中道の心が求められるのではないでしょうか。
利益を否定するのでもなく、利益だけを追い求めるのでもない。
必要な収益を得ながら、その目的を常に「仏教の教えとご供養を未来へつなぐこと」に置き続けることが大切です。
住職の仕事は、お経をあげることだけではありません。
仏教の教え・宗祖の教えを受け継ぎ、百年後、二百年後も変わることなく、人々が安心して手を合わせられる場所を守り続けることも、大切な使命です。
お金は寺院の主人ではありません。
その順序を決して見失わないこと。それこそが、これからの時代を生きる寺院と住職に最も求められている姿勢なのではないでしょうか。