上行寺 旭之祖師 日蓮宗 示迹山

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彫刻チャレンジ 第4話

▽前回までのお話はこちら▽
彫刻チャレンジ 第1話
彫刻チャレンジ 第2話
彫刻チャレンジ 第3話

10月下旬、ついに顔に刃を入れた・・・

どうやったら良いかわからず、まずは輪郭に丸みをつけることから始めた。
輪郭に沿って削り、内側から外側に丸みをつける。

⏫赤い線の部分を彫り進める

文字にすると簡単に思えるが、実際は神経を使う細かな作業だった。
それと同時に、目や鼻や口をはっきりと際立たせるために頬や鼻筋を作っていく。
高い部分を残して凹凸を作るような感じで低い部分を彫っていった。
これも彫りすぎると台無しになってしまうので、少しずつ刃を慎重に入れていった。

また全体的な仕上げも進めていく。凹凸を目立たせる部分と滑らかにする部分をそれぞれ進めていく。
また、全体的に丸みが出るようにしていった。

顔の凹凸を付けるべく、彫らないとこを鉛筆で黒く塗った

⏫これが丸みをつける前

⏬丸みを整えた後

こうして、
「顔が出来てきた!」
そう言いたいのだが、現実は全くであった・・・
のぺっとした凹凸のない顔、どう表現するのが最適なのかわからないが、“顔”とはほど遠い顔になってしまった・・・

皆さんも自分の顔を想像して欲しい。
人の顔の1番高い部分はどこか?
それは鼻の先端部分である。
そして次は口(唇の先端)、おでこ(額)や顎・頬と続いていく。
つまり、
平面から顔を作るとき、鼻の頂点が平面部分になるので、残りの部分は彫っていかなければならないのだ。

⏫鼻を除いた顔全体を彫っていかなければならなかった
まずは顔全体を彫ってからさらに凹凸を付けるために細かく彫っていく必要がある

輪郭に丸みをつけて凹凸を際立たせるだけでは“顔”は出来ない!
考えてみれば当たり前のことである。

しかし、
その“当たり前”さえもわからなのが素人、初心者なのだ・・・
このことに気づき、顔を全面的に彫り直す決意を固めたのは12月の下旬。
もうタイムリミットが迫った年末であった・・・


話は少し遡るが、昨年の11月1日から“水行”を始めた。

これは寒壱百日の厳しい修行で知られている「日蓮宗大荒行堂」の開始に合わせてのことだった。

他のブログで少し触れていたが、身延山僧道実修生時代と荒行堂入行中以外では初めて。
院首や家族からも「どうしたの?」と困惑されるほど・・・
 
なぜ今になって始めたか?ブログでも書いた通り理由は多々あった。
・僧侶としての不安や焦り
・実生活の中で上手くいかないことやままならないことへの悩み
・本厄で色々とあったこと
・ある方の大黒天を彫っていること
 
多々ある理由の1つ、「大黒天を彫っていること」が重要だった・・・
 
『一刀三礼(いっとうさんらい)』という言葉がある。
皆さんはご存じだろうか?
この意味は、「仏像を彫るとき、刀で一彫りごとに三回礼拝する意から、敬虔けいけんな態度で仕事をすること。」である。
 
今仏像を彫り進める自分にとって必要な心持ちだ。

しかし、
現実的に一刀につき“三礼”するのは大変だ。
お題目をお唱えしながら彫り進めるのも良いかもしれないが、集中すれば自然と無言になってしまうので、それも難しい・・・

そこで、
大黒天彫刻に真摯に向き合うべく、水行を始めたというのも大きな理由の1つだった。
水行で心身を浄め、大黒天を彫り進める・・・

私の中での“一刀三礼”としての水行だった。
水行はもちろん寒いし水は冷たい。
だからこそ、目が覚めるし清々しい!
水行をすると身体が熱を発してポカポカしてくる。
サウナ好き(サウナー)の方々が「整う」と表現する感じによく似ている気がする。
水行も「整う」のである・・・
 
もう少し脱線するが、
毎年大黒祭に合わせて【除厄開運水行】を行っている。
これは一般の方から参加者を募り一緒に水行をするものだ。

この行事は参加者のリピーター率が非常に高い。
1度水行を経験すると「またやってみたい!」と思う方が非常に多いのだ。
そのこと1つとっても、“水行”の魅力を物語っている・・・
 

話がいろいろと逸れたが、このチャレンジもすぐフィナーレ。

続きは最終回へ・・・

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